コーヒーにおけるコクの要件ってなんなんですか?

「コク」なんて概念は、必要に迫られない限り、古典的なボディと言えば事足りてしまうはず。

そして迫られたとしても、現実ではボディにおける複雑さとしてまずは現れるようだから、ボディに還元しきれない次のステップとしてのコク……というものは、実際には遭遇しないただの可能性に格下げされる。

もちろん、可能性でしかないものを現前させるのがプロですけど、これはまた別の話。

実際の商品説明ではコクという言い方もされるけれど、まずは使用が躊躇われている。これが、専門家一同に大前提とされている感覚に思える。さしたる確証があるわけではないけれど、そういう言葉遣いをしているよう見える。たとえば、通販の個別の商品説明でよりもブログやフェイスブックで、コクという単語は使われがちかもしれない。

日常語だと、コクは料理の概念になるはずだ。たとえばカレーとか肉じゃがとか。これらの奥深さというか、味の多さだけ抜き出せば、それはやはりボディの複雑さ、ニュアンスやノートなどの単語へ形容詞を付けてバリエーションとして、言いたくなるはずのものだと思う。現状ではそう捉えている。

だから自分の中では、コクなんて言うしかないものがあるとすれば、それは深煎りの言い表し難い美味さであり、その名状しがたさ、それにだけ使えば事足りてると思っている。

もちろん、これは濃度とは無関係とするべきかもしれないが、ここでは既に深煎りを前提にしてしまっているから濃度は付随する。となれば無関係とは言えないのだろう。とすれば畢竟、浅煎りらしいコクみたいなものは別個に説明する必要がある。

ということであるならば、浅煎りらしい名状しがたさもあるのではないか?これはただのアブダクション。これもあるはずだ。具体的にはブルーマウンテンの方向になる。たぶん、500円のブレンドの美味さの方向。品種としてはパカマラに代表させてる。*1

マンデリンの明るさやシルキーさからも少し異なる、ボディ感もスペシャルティ系よりも軽妙。意外と、少ない粉で2分ぐらいで済ますと、普通のスペシャルティなハイローストらしいボディの濃さに近づく気もする。*2

適正な濃さにすれば、甘さにも特徴が出るはずで、これが適正濃度の指標になるはず。おそらくは酸味と甘みに苦味の香りが乗って、そういう差になってる。

この風味に味があるタイプはそれなりにあるが、苦味の香りが他の質感に乗るってのはあんまないのだろうと思うので、この挙動そのものまたは先のシルキーさの亜種とその基調になる旧来の酸の香りの出方が上質という一言で表されてもいるはず。

ただ、おそらくは、このシルキーさの亜種でも、上質の本領までは到達できていないはず。かと言って、もちろんではあるけど、マンデリンらしい(と言っては現在の認識からでは語弊があんのかな?)シルキーさがその本領の一端とされているわけでもないはず。*3

なので、やっぱり酸の先にあるのはティピカの香味で間違っていないはず。

*1:ベタな酸の香りがカップから立ち昇ってくる500円くらいのコーヒーっぽいスペシャルティってないのかなと、なんとなく思い続けて数ヶ月後に遭遇したから驚いた。やっぱりあるんだ。オーナーも探してるんだ、と。

*2:粉の量で押し切る少量ドリップは、現に存在するコーヒーから鑑みればおそらくありえない。不味くはないだろうけど、適正になりえない。そういう感覚が現時点ではある。まぁ歪ましまくった先にブレイクスルーがあるかもしれんけど。というか、量や粗さで調節なんてできないはずとさえ思ってる。だからこそ焙煎が問われる。飲む側からすれば、焙煎に合わせなければならない。循環してる?そう、それでいい。

*3:でもきっと、オーナーのその原体験というか、やっぱり錯覚だったって蓋然性が高そう。もちろん、本人もそれは知ってるし、なんだってこういう体験はワインであるはずだしね、それでも、求める方向としては圧倒的に面白い。そういうスタンスが、普通にオーソドックスで、いいな、面白いなこの店。